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2011 06/10 【連続企画 第2回 トライアンフ・スクランブラーを仕上げる】

ノースウイングJCさんでは新車納車時、又は1000km走行後の初回点検時に必ず実施されるバルブクリアランス調整と吸気同調作業。
今回、オーナー様が約1000km走行され、メンテナンスで入庫したとの連絡をいただいて行ってきました。

[作業の前に]

なにをするのも完調なエンジンありき、とのお話をしましたが、
そこで重要になるのが全ての車両が完調な状態で納車されているのか、ということです。
ユーザーの立場では、それは新車時には全く問題なくメーカーから届けられている・・と疑う余地の無いところなのですが
実は国内外問わず少なからず個体差があるのです。
外車は個体差が大きく、国産は少ない、が業界では一般的な見解です。
これはメーカーの良し悪しで語られる部分ではなく、日本と海外の考え方の違いが大きな要因です。
国産は数をこなす為に、ユーザーに対して個体差をなくす必要がありました。よく言う「当たり外れ」を少なくする技術が発達したわけです。
反対に外車は昔から初期のセッティングからディーラーメカニックやユーザーにゆだねるところがあります。
私はこれを、「ユーザーの使用する状況が一人一人違う為、その人に合ったセッティング、メンテナンスはそれぞれで行う事」とメーカーが考えていると理解しています。
ここでバイクを扱う上でメンテナンスの重要性を私たちはもっと感じるべきなのです
日本製であってもバイクである以上、付き合い方は同じと言えます。
特に外車であれば輸入元やディーラーにその責がある、と私がお話しするのも理解していただけると思います。

[正しいバルブクリアランスの意味]


インジェクション、キャブレター問わず重要なのは、
全てのバルブがそれぞれの作用において、基準値内かつ等しく開いているかが重要です。
等しくなければ、設計上の充填効率を得られませんので普通の動力性能すら発揮されないのです。
簡単に申しますとメーカー公表値、性能曲線通りにするには絶対に大きな誤差は許されません。

[測定作業]

このエンジンは1気筒あたり、吸気側2個 排気側2個の4個で2気筒ですので合計8個のバルブがあります。
この車両で測定したところ基準値内は1個のみ、
あとの7個は正しいクリアランスにしなければならない事が判明、と言うことは8個全部がバラバラだったのです。
基準値にはそれぞれ許容範囲がありますが、各バルブ最小値(バルブが一番大きく開く値)からでは
誤差測定値が0.05mm〜0.11mmもあり、前回試乗時に感じた乗りにくさが裏付けられた結果となりました。
取材車両はインジェクションで最小値を目安にしますので
この誤差の大きさはノーマルのエンジン性能を大きく低下させる元凶になる訳です。
もしこういった調整をしたことが無い車両は誤差のあるまま使用しています。

[調整作業]


正しいクリアランスにする為に、先程の測定値から必要なシムの厚さを算出して交換します。
その作業後に吸入同調をとり、エンジンの充填バランスを整えます。

[試乗]

セルスイッチを押した直後に変化がわかります。
前回とは別物のように静かで安定したアイドリング、
レーシングしても軽く吹け上がり、その間不快な振動や車体をゆらすバランスの悪さはなくなっています。
走り出せば270°のパルス感がはっきりとライダーにわかりやすい特性に。
低速トルクも増大して、排気量のわりに細いトルクに手を焼いたりスタート時のエンストの不安もありません。
加速中の各ギアのつながりもよくスピードの乗りも抜群で(かなり速いですよ)充分な動力性能を感じる事ができます。
また、発生するトルクが安定したおかげでファイナルがショートになったように市街地での扱いやすさも良くなっています。
具体的には走行状況において選ぶギアが明確になったためにアクセルコントロールで姿勢制御でき、クラッチに逃げなくていいのです。

[第二回を終えて]

メンテナンスの重要性をおわかりいただけましたでしょうか。
肝心なのはオリジナルのパフォーマンスを正しく発揮させる事です。
これが無いまま何を変えたところで、余計にバランスを崩してしまいます。
販売されている車両は、マフラーはもちろん全てノーマルのままで充分な性能を持っています。
こういった作業をすれば、ご理解いただけ、また試乗で自分の車両との違いがわかるでしょう。
トライアンフは日本の道で乗る楽しみを感じさせる車種があります。
その中の1台であるスクランブラー、これを選択される方は直感的にその潜在能力を感じれるライディング・スキルをお持ちと思います。
メンテナンスをすれば感じたとおりのキャラクターを持つ車両になる事が証明されました。
まだエンジンだけでもこの乗りやすさですので、ここからさらに作業をを進めていくのがとても楽しみです。
様々な道を走る車両とするためにテーマである「最高の妥協点」を突き詰める作業はまだまだ続きます。
文字をクリックするとノースウイングJCさんのメンテナンスページをご覧いただけます
下記のサイトでメンテナンスに対する正しい知識を得る為に、ぜひ参考にしてください。
ノースウイングJCの考えるメンテナンス
では次回をお楽しみに。

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